桜空あかねの裏事情
そう言って、瀬々は懐から厚い手帳を取り出して、数ページほど捲る。
「あかねっちを攫ったアロガンテってチームは、プラティア第六区を拠点にしてるのは知ってるッスよね?」
「ええ」
結祈とアーネストがそう言っていたので、間違いはないだろう。
プラティア第六区は危険区域にこそ指定されているが、それは第五区のように、隠者や犯罪者など異能者社会でさえ生きれない者達がひしめいているのではない。
異能者社会の中枢を担っているチームが、それぞれ縄張りを張って睨み合っているが故に、危険区域とされているのだ。
チーム・アロガンテもまた、その一つなのだろうと朔姫は思った。
「……私達は、あかねはアロガンテの屋敷に捕らわれていると考えているわ」
「そうッスね。アロガンテはある意味、要塞みたいなもんッスから、檻として丁度良いんじゃないスか?」
「どうして……」
聞き返そうと呟く朔姫。
だが相手は、友人とは言えど情報屋。
どんな些細な事でも、駆け引きを望む。
問い掛けようとして、咄嗟に口元を抑えるが時すでに遅く、瀬々は朔姫をしっかり捉えていた。
「どうしてって、何がッスか?」
聞き流せばいいのにそうはせず、敢えて聞き返す瀬々には自分が密かに思っている事など看破しているのだろう。
その鋭さは上司であり師でもあるジョエルを思わせる。
見逃すつもりはないと言わんばかりの、挑発的にも見えるその表情に、朔姫は思わず溜め息を吐く。
「…どうして、そう言われているのか気になって」
半ば降参したように疑問を投げれば、瀬々はどこか楽しそうに笑って話し始めた。
「第六区はチームの拠点が多くありやす。んで、それぞれが縄張りを作って、互いに牽制しあってるんス。他チームの奴らが縄張りを荒らしたりしたら、抗争になりかねない。そうなったら赤の他人も巻き込む可能性もある。だから第五区と同様に、危険区域に指定されてるんスよ」
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