桜空あかねの裏事情
「ええ……それは知ってる」
過去にジョエルが第六区へ赴く時に、朔姫は一度だけ同行を申し出た事があった。
だがジョエルは理由も言わず、頑なに拒否し同行を許したのは結祈だけだった。
まだ実力不足だから連れていってもらえないのだと、当時の朔姫は思っていた。それからしばらくして、再びジョエルが第六区へ赴いた時、自分と留守番をしてくれたアーネストに第六区がどういう場所か教えてもらったのだ。
「オルディネは普通に戸松の住宅地にあるんで、大した仕掛けはないと思いやすけど」
「……」
「他のチームの拠点は、いつ攻められてもいいよう、ある程度防げるように屋敷を造ったり、仕掛けを施してたりするもんスよ」
瀬々のもっともな説明に納得する朔姫。
しかしそうなると、やはり一つ疑問が残る。
「チーム同士の私闘は禁止のはず」
チームは協会に定められた規則を承諾し従う事で、運営している。
その中で、俗にランキング戦と言われる公式戦以外で、他チームとの私闘は禁止されている。
「そりゃ勿論。いかに実力社会といえど、同胞同士が争い殺し合いになるのはタブー。協会が定めた規則の中でも、他チームとの私闘禁止は守らなければならない重要事項ッス」
争い、私闘禁止、重要事項。
それら言葉には重みがある。
一般人から未だ忌避されている異能者にとって、最大の罪は同胞殺しであると遠い昔に、アーネストに聞いた事がある。
それと同様に、闇市などで同胞を売買する事も重い罪であるとも言っていた。
瀬々の言っている事は、間違っていない。
だが、どことなく腑に落ちないのだ。
「でもさ」
「?」
「よく考えみて下さい。果たしてそれが、本当に守られていると思いやすか?」
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