桜空あかねの裏事情

「どういう事?」


不意に問い掛けられ、朔姫は不審に思い聞き返す。


「そのままの意味ッスよ?私闘禁止という規則が守られているか否か……答えは二つに一つッス」


普段から言葉巧みに真意を問い掛ける瀬々にしては、単純明快な問いに、朔姫は押し黙る。
何故か。


「私には、答える事は出来ないわ」

「どうしてッスか?」

「あなたのように、多くを知らないから」


伏せ見がちにそう告げて、朔姫は言葉を続ける。


「私はオルディネという枠の中にいて、それに守られている。だから聞かなくていいこと、知らなくていいことは遮断される」


異能者としての自分を育ててくれたジョエルや結祈は、あくまで純粋な異能者としての成長を望んでいたのだろう。
チームに所属し保護の対象となる異能者として。
だから異能者社会の裏事情を教えはしなかった。
自分が知っている裏事情は全て、アーネストや陸人から部分的に聞いたものだ。
正直言って、最近になって異能者としての自覚を持ち始めたあかねや昶の方が、自分より異能者の現実や裏事情を理解しているような気がした。
それを疑問に思った事はあったが、悔しいと思った事はなかった。
結局は何を思ったところで、その生温い枠組みの中から出たくないのだ。

――それでも、瀬々くんの問いの答えは予想はつく。
だが答える事は出来ない。
否、しないのだ。


「つまり、臭いものには蓋をするという教育を受けてきたわけッスね」

「そうかも知れない」


反論もせず肯定すれば、瀬々は何だかつまらなそうな顔をしていた。
恐らくはそれ以上の駆け引きが出来ないからだろう。


「まぁ別にいいッスけど……残念ながら答えはNO」


どことなく予想はしていた答えに、朔姫は驚くこともなく、ただ平然と耳を傾ける。


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