桜空あかねの裏事情

「山川さんだって薄々分かってるでしょ。私闘禁止って規則を本当に守られているなら、縄張り張って牽制し合う必要もないし、あかねっちが攫われる事も無かった。そして何よりトラディメント・ドメニカなんて惨劇が起こる事も無かったはずなんスから」


そうはっきり告げられて、何故か靄がかかったようにうやむやだった心が晴れていく気がした。
決まり事は既に存在しているのに、現実はそれを無視して成り立っていることに酷く不満を抱えていたからだ。


「俺個人の解釈として、私闘禁止とかその他もろもろの規則は建前、または心得ってぐらいのちっぽけなモノなんスよ。協会の目が届くところで、守ればいい。それだけッス」

「理不尽ね」

「まぁね。でもそういうとこは、一般社会とそう変わらないッスよ。腹黒いところはあるし、社会体制からしてあっちもあっちで大変ッスから」

「そう…」

「あー……話の論点がズレちゃいやしたね。結論からして、アロガンテの屋敷に侵入して、あかねっちを奪回する事はあまり勧めないッスよ」

「え」

「あれ?そういう話じゃなかったッスか?」


確かにそうだ。
昨日、昶が何か思いついたらしく話を聞いたら、全員でアロガンテの屋敷に潜入して、あかねを助ければいいなどと言っていた。
当然ながら、無謀過ぎると陸人や駿に駄目押しされたわけだがだが、結祈に話すと一点張りで、今日は学校を休んでヴィオレットで彼の帰りを待っている。
昶の案は通らなかったが、朔姫自身、全員とは言わなくても潜入してあかねを助ける事が出来るのではと考えていた。
だが考えるにも情報が十分にあるとは思えなかった為、登校してくるだろう瀬々に、何か聞けないかと思ったのだ。


「話の流れからして、そうだと思ったんスけど……違いやした?」

「……いいえ。間違ってないわ」


どうやら瀬々は皆まで言わなくても分かっているらしい。


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