桜空あかねの裏事情

「クスッ…ふふふ」

「わ、笑わないで」

「ごめんなさい。少し可笑しくなってしまって…ふふ」


笑いが絶えない黒貂を前に、徐々に顔に熱が集まっていくのが分かり、抑えるように掌で頬を覆うあかね。
聞かれたのが彼女だけだから良かったものの、もしここに結祈やアーネストがいたらと思うと、それはそれで恥ずかしい。
もっとも、ジョエルは鼻で笑っているだろうが。


「ふふ。先程、矢一が昼食を持ってきたので、食べましょうか」

「うん!」


昼食と聞き、勢い良く頷いて立ち上がり、後に続く。
奥にあるテーブルには、既に食事が用意されており、椅子に座る。


「今日の昼食は、オムライスというらしいのですが」

「そうそう!昨日、矢一に和食ばっかりじゃなくて、洋食も食べたいって言ったの」

「まぁ、そうでしたの。配慮が至らず、申し訳ありません」

「大した事じゃないよ。普段洋食が多かったから、口寂しくなっちゃっただけで。いただきます!」


空腹もあってか、合掌し即座に料理を口に運んでいく。


「ん〜!美味しい!」

「ふふ。それはようございました」


満足そうに頬張るあかねを、黒貂は微笑ましく見つめる。


「はむ!これは絶対、結祈が作る料理にも負けてないね」

「結祈……確かあかね様のお仲間で、オルディネの」

「うん!とても優しくて気が利いて、館の家事全般出来ちゃうんだ。あとね、すっごく美少年なんだよ」


満面の笑みではっきりと、そう告げる。


「…あかね様は、その方を大切に想っていらっしゃるのですね」

「もちろん!でも結祈だけじゃないよ。昶も朔姫もみんな大切で、大好き!」


まだ中途半端な自分を支えてくれる人達。
リーデルを目指し頑張ろうと思えるのも、今ここからオルディネへ戻る事を諦めないのも、きっと彼等の存在があるからだ。
少なくとも、あかねはそう思っている。

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