桜空あかねの裏事情
だからもっと、知りたいと思う。
そう断言すれば、矢一は驚いたような顔をしていた。
「……が…」
「?」
「それが……君がリーデルに選ばれた理由か」
不意に呟かれた言葉に、あかねは身が強張るの感じる。
「……何の事?」
「数日ほど、君と周囲の者を観察した。いつも傍にいる友人や、菊地の三男がよく君の事を話しているのを聞いたのだ」
動揺を悟られないように知らぬふりをして聞き返せば、矢一は素直に答えた。
とは言え、確信したのは今だ。と最後に付け足して。
――という事は、動揺したのを悟られてたのか。
――私の馬鹿。
自身に悪態を付きつつも、ここに来た時、矢一は諜報としてアロガンテに所属していると言っていたのを、あかねは思い出す。
そして彼の言う観察で、リーデルの事まで知られているなら、オルディネの内情も知られている可能性があるのではと不安が過ぎる。
「もしかして、黒貂やオーナーも知って…」
「否。この事実を知るのは我のみ。だから安心していい」
不安から口走る言葉を遮って告げられた事実に、あかねは思わず安堵し、息を零す。
「やっぱり矢一って、悪い人じゃないよね」
安心したように言えば、矢一は目を丸くする。
「何故?」
「だってほら、私を攫った時も危害は加えないとか言ってたし、リーデルの事だって内緒にしてくれてるし」
最初こそ警戒してたものの、今は違うと理解している。
しかしそう言われた矢一は、表情に目立った変化は見られないものの、どこか困惑しているのか視線を逸らす。
「…ただの事実だ。危害を加えるため連れて来いと命じられたわけではない。それにリーデルの件も、真偽を判定するには時間を有した」
苦し紛れの言い訳とも取れる言い分に、あかねは思わず笑みを零す。
すると今度はふてくされたように、表情を僅かに崩した。
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