桜空あかねの裏事情

「ふふ。矢一ってあんまり素直じゃないんだね」

「…事実だ。それにリーデルに関しては気掛かりな点もあった」

「気掛かり?」

「君がここに来て早5日。しかしオルディネには、何ら目立った動きはない」

「あー……」


あの時、昶と朔姫がその場にいたので、攫われ行方不明である事は周知の事実だろう。
動きがないという事は、受け取り方によっては寂しいものでもあるが、オルディネの人員を考えれば、仕方ない気がした。
特に陸人辺りは動くどころか、いっそこのままいなくなってしまえと思っているかも知れない。

――それに泰牙さんの事もあるし。

彼の怪我は最初こそ酷いものだったが、日に日に回復の一途を辿っていた。
恐らく今頃はもう完治しているだろう。
出掛ける約束しているので、館を去る事はないと思うが、ジョエルが追い出してないか心配であったりする。


「まぁ…今は気にしない事にします」

「…そうか。だが動きがなくても当然かも知れない」

「え?」


いまいち意図が汲み取れないあかねは首を傾げる。


「どういう事?」

「君が襲撃されていた時とほぼ同時刻。オルディネの館も襲撃されていた」

「ッ!」


襲撃。
その言葉にあかねはあからさまに動揺し、焦燥感駆られたように不安げな表情を晒す。


「館の襲撃に直接関わったわけではないが協力はした。言い訳はしない。君を必ず確保する為の、強攻策だった」

「そんな……みんなは」

「無事だと思う。アヴィド側の報告によると、どうやら失敗したらしい」

「アヴィド?……まさか」


――間違いない、アヴィドの狙いは泰牙さんだ。

矢一の言う協力というのは、それぞれの目的が偶然にもオルディネにあって、結託したという事なのだろうか。

――黒貂の事は信じてるけど、やっぱり待ってるだけじゃダメかも知れない。

そう考える傍ら、約束の期限まで、あと一週間ほどしかないという事実も突きつけられる。


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