桜空あかねの裏事情


このままでは、過半数の異能者を集める事も、リーデルとして認められる事もなく、半端なままで終わってしまう。

――それだけは何としても避けないと。

しかしそう強く思ったところで、現状は変わらない。
どうしたらいいんだろうか。
思考に思考を重ねて考え込んでいると、それを見かねた矢一が一息ついて口を開いた。


「…私達の予定では、君を明日解放するつもりでいる」

「え……」


唐突に告げられ、思考を断ち切られたあかねは、唖然として声を零す。


「明日、オーナーは黒貂様を連れて闇市へと行く。君は付人として、同行する事になると思う」

「闇市って……異能者を売ったり買ったりするところだよね?」


駿から話を聞いた事が正しければ、そういう認識で間違いはないはずだ。
案の定、予想通り矢一は頷いた。


「主にはそうだ。その他に、情報や貴重な密輸品などの取引も行われているらしい。詳しい事は、我より君の知るアーネストに聞くといい。過去に何度か、参加していた」

「へぇ…」

「本来、君のような子供を連れていくのは不本意。だがオーナーの目を欺き、君を逃がすには最善。オルディネの面々が、食い付いてくれたらの話だが」


――ん?食い付いて?


「えーと……それってどういう」

「こちらの話だ。とにかく明日は、絶好の好機。我も抜かりなく任務を遂行するつもりだが、君も気を引き締めて掛かって欲しい」

「ッ…」


矢一の真剣な眼差しに息を呑む。

――そうだ。私も必死だけど、主に逆ってる黒貂と矢一も必死なんだ。

その事実に気付いたあかねもまた、真剣な眼差しで矢一を視線を向ける。


「…うん。分かった」


そう力強く頷けば、矢一は安心したように少し顔を綻ばせた。


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