桜空あかねの裏事情
某所
「あかねちゃん」
誰かに名前を呼ばれた。
「あかねちゃん、起きて」
また名前を呼ばれ、ペチペチと音がした。
「おーい、あかねちゃーん」
今度はパシンと音がした。
妙な小さい痛みを感じる。
「……ん」
ポツリと呟いて、あかねは目を開けた。
ぼんやりとした暗い視界の中に、不安そうな面持ちで、こちらを見下ろす泰牙の姿があった。
「良かった〜。なかなか起きなかったから心配したよ。どこか痛いところは?」
「大丈夫です。それより……アヴィドの人達は?」
「もういないよ。君のお陰で、なんとか撒けたから」
「私の…?」
不思議そうに呟くと、泰牙は頷き安堵の表情を浮かべた。
そしてあかねをそっと引き起こし自分の膝の上に座らせると、身に付けていた黒石の首飾りを指指した。
「君が付けてるこの石、どうやら異能石だったみたい。それもかなり力のあるね」
臨海の前にジョエルからお守りとして貰った物だ。
手に取ってみると、使った所為か大分小さくなっていた。
「お陰で逃げることができたけど、君は負担が大き過ぎて気絶しちゃうし、辺りが何も見えないくらい真っ暗になって客が大騒ぎしちゃったり。ある意味大変だったよ」
大袈裟に話す泰牙に、あかねは小さく笑みを浮かべる。
「すみません」
「あ、責めてるわけじゃないのよ?むしろ感謝してるんだ。あのまま君を守りながら彼等と戦うのは、流石に分が悪かったからね」
苦笑する泰牙にあかねは不意に笑みを消し、申し訳なさそうに眉根を下げた。
「ごめんなさい」
「え?どうして謝るのさ」
「泰牙さんに……嫌な思いをさせちゃったんじゃないかって」
「そんなことないさ!昔に比べたら、全然マシだよ」
「……」
尚も浮かない様子のあかねに、泰牙は困ったように笑いながら彼女の頭を撫でた。
「本当だよ。本当に、あの頃と比べたら恵まれてるんだよ」
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