桜空あかねの裏事情
「侍女の話によると、連中を手引きした者達がいたみたいでね。ほとんどの者が混乱したまま、抵抗する間もなく捕まったんだって。そしてそのまま、全員広間に集められて……」
話を聞いた事を思いだし、一瞬喉がつかえた。
だが心配そうに見つめるあかねの視線を受け、泰牙は微笑みを貼り付ける。
「連中は……連中は捕らえた者達を端から順に殺していったらしい。明るくて世話好きだった母を、厳しかったけど優しかった叔母上を、子を産んで間もない一ノ姫様とその旦那様を、姫様が抱えていた赤ん坊を、やんちゃだった弟を、弟と仲の良かった三ノ姫様を、家族同然に暮らしていた使いの者達を――皆殺しにした」
ありとあらゆる残虐かつ残忍な方法で、アヴィドの連中は大切な人達を殺した。
そう告げた侍女は両手で顔を覆いながら、激しく咽び泣いていたのを、泰牙はよく覚えている。
「その話を聞いた時、俺は何も言えなかったよ。でも色んな事を思った。怒りや憎しみ、悲しみ。色んな事を思い過ぎて、頭がおかしくなるくらい」
まるで心臓が破裂するかのような衝撃だった。
それを目の前で見ていた四ノ姫と侍女の衝撃は、想像を絶するもののはずだ。
そう断言出来るほど、泰牙には十分過ぎる事実だった。
「俺達が椿家に匿われてから間もなくして、御三家によってアヴィドの粛清が行われて、当時のリーダーを始めとして、多くの者達が処刑された。襲撃に関わらず、刑を免れた者達で再構成されたのが、現在のアヴィドだ」
そう語った泰牙に、あかねは俯いてしばらく黙り込んでいたが、不意に口を開いた。
「だったら……どうして今も、狙われているんですか?」
今までの話を聞いて、あかねは率直に疑問に思った。
泰牙の一族は滅ぼされ、滅ぼした当時のアヴィドの者達も粛清された。
だからこそ、あかねはなおさら彼らが、未だに泰牙を狙い続ける理由が分からなかった。
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