桜空あかねの裏事情
「…なんでだろうね。曲がりなりにも当事者だからかな。首謀者達がいなくなったとはいえ、連中からしたら邪魔なのかも。とか理由をつけてみるけど、俺も正直のところ分からない」
あかねの問いに、泰牙困ったような笑みを浮かべた。
椿家に匿われて半年後、生き残った泰牙達は、遠縁の柳生家に引き取られた。
だがその後も、泰牙達はアヴィドの連中から水面下で狙われ続けた。
「初めのうちは知り合いや御三家と協力して抵抗したんだけど、奴らもしつこくてね。そのうち俺達を裏切る人も出て来ちゃって。流石に参っちゃったよ。こんな事がいつまで続くのかって」
疲れたように語る泰牙に、あかねはきつく唇を引き結んでいる。
「俺達は知り合いの家を転々としたけど、連中との確執はまだ続いた。それから二年経った頃。連中と争いの最中、一緒に生き延びてきた侍女が死んだ。俺を庇って、目の前で」
その光景は時間にすれば一瞬。
だがあまりにもゆっくりで鮮明だった。
二ノ姫達があの惨状から決死の想いで救った託されたものを、泰牙は守る事が出来なかった。
「まるで心を二つに引き裂かれたような痛みだった。彼女もあの時、こんな思いをしてたんだと痛感した」
笑顔を貼り付けることが出来なくなって、泰牙は目を伏せた。
まるで揺らぐ感情を抑えつけるように。
目を開けると、その様子をずっと見続けていたであろうあかねと目が合い、再び笑みを作る。
「今更俺がどうこうするわけでも、できるわけでもない。でも連中が、俺達を殺したいことは分かる。だから俺は……俺は逃げたんだ。四ノ姫様を守るためにも。二ノ姫様達に報いる為にも。たくさんの理由をつけて」
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