桜空あかねの裏事情


「変わったね。と言うより、強くなったのかな」


そんなあかねの言葉に蓮は目を瞬かせた後、そう言って少しだけ笑みを見せた。
その眼差しはどこか優しげでもあったた。


「そう?大して変わってない気がするけど」


確かにこの二ヶ月の間、今まで体験したことのない出来事が数多くあり、劇的な環境の変化をはじめ自分に影響を与えたのは間違いない。
久々に会った兄に変わったと言われても頷ける。
だが強くなったかと言われると、はっきりとした自覚はなかった。
強いて言うなら、以前より異能を使いこなせるようになったくらいだろうか。


「強くなったかは分からないけど、本当にそう見えるなら」


――それは間違いなく……。


「みんなのせいかもね」


この二ヶ月で出会えた性格も境遇も年齢もバラバラだけど、あかねにとっては特別な人達。


「みんなって、友達のこと?」


蓮の問い掛けにあかねはただ笑みを浮かべるだけで、何も言わなかった。
だがその笑みは穏やかで柔らかく、そして何より心の底から嬉しそうに笑っていた。
そんな妹の姿こそが答えであると、蓮は静かに微笑みながらそう感じた。


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