桜空あかねの裏事情
――大丈夫。
――きっと。
覚悟を決めたあかねは瞼を開け、澄んだ青い瞳をジョエルに向ける。
「みんなは?」
「食堂だ。全員、君を待っている」
「分かった」
短く答えて静かに歩き出す。
食堂の扉の前まで行くと、ゆっくりとドアノブに手をかける。
「………」
「怖いか?」
手をかけたまま動かなくなったあかねに、ジョエルは静かに問う。
「少し。今更だとは思うんだけど」
「君はやるだけの事はしたはずだ。あとは自分を信じればいい」
「…そうだね」
あかねは意を決して、ドアノブを回した。
パァン! パァン!
扉を大きく開けた瞬間、派手な音が鳴り響いた。
「「おめでとー!」」
「な、何?」
突然の破裂音に後退る。
よくよく見ると、目の前に色とりどりの紙テープが散っていた。
「へへっ!クラッカーだよ。定番だろ」
「定番って……」
そう言って笑う昶に、何のことだか分からず困惑していると、陸人が呆れた眼差しを向けてきた。
「分からないのー?キミのリーデル就任パーティだよー」
「え――」
面を食らった立ち尽くしていると、柔和な笑みを浮かべた紅晶が腕を引いた。
「あかね様、こちらへ」
連れて行かれた食堂にはパーティの準備がしてあった。
いつもより豪勢な料理の数々。
テーブルの真ん中に置かれたケーキは見るからに手作りで、プレートにはやや歪な字で『おめでとう』と書かれている。
「このケーキ……」
「俺と朔姫で作ったんだ。時間が無かったから雑になっちまったとこもあるけど」
昶の説明に、朔姫は気恥ずかしそうに頬を染める。
「…プレートの字は昶が書いたわ。汚いでしょう」
「え!?そ、そんな汚くねーよッ!つか、時間無かったんだからいいだろ!」
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