桜空あかねの裏事情


慌てる昶に、あかねは何を思ったのかハッとする。


「連絡がつかなかったのって…」

「そうよ。敢えて連絡を取らないようにしていたの」


あかねの呟きに答えるようにギネヴィアが話し出す。

「会議が終わって、昶くんの提案でパーティをすることになったんだけど、時間がなくてね。でも幸いあかねちゃんから連絡は無かったから、アタシ達がまだヴィオレットにいると見せかけたの」

「だが君がそのまま館に帰ってくる可能性もあった。念には念をと、君の学友にも協力してもらった」


続けて駿が答えた。
昶と連絡が取れなかった理由が分かり、あかねは安堵する。
そして学友というのは、恐らく瀬々だろう。
頼まれた事というのは時間稼ぎで、行動を共にし館に帰るのを僅かながら遅らせることだったのだろう。
問い詰めた時、妙に歯切れが悪かったのも頷ける。

――なら……私は本当に
――リーデルになれたの?


未だ実感が湧かず内心戸惑っていると、結祈が優しく笑った。


「大丈夫ですよ」

「結祈…」

「私を含めたこの場にいる全員が、寸分違うことなく貴女をリーデルに指名しました」

「うそっ」


その言葉にあかねは思わず陸人を見る。


「何?」

「あ、いえ……何でもないです」


目が合った途端、鋭く睨み返され、あかねは気まずそうに目を逸らした。


「あーあ。陸人ってば大人気ないね。あかねちゃん怖がってるよ。もうちょっと優しくしたら?」

「別にボクは認めたわけじゃないし。オルディネの切羽詰まった状況を考えて、今回は特別に許可しただけだから」

「またそんな事言ってー。ホントに素直じゃないなぁ。ねー!あかねちゃん」

「え、っと……」


泰牙のからかい口調に、陸人は更に顔を歪める。


「うるさいな。元はといえば、アンタとアーネストがオルディネに入るとか言い出すからじゃん」


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