桜空あかねの裏事情
「えっ…」
あかねは驚いて、泰牙を見上げる。
「泰牙さん、今の話って」
「本当だよ。迷って悩んで、今日になってようやく決めたんだ。大分遅くなっちゃったけど」
「そんなことないです。決心してくれただけでも、私はすごく嬉しいですから」
そう言えば、泰牙は安堵の笑みを浮かべた。
そしてあかねの腕を掴み引き寄せると、勢い良く抱きしめた。
「んぎゃ!…ち、ちょっと泰牙さん!」
「なんでそんなに可愛いんだか!大好きだよ!それでいて、俺が望む言葉をいつもくれるんだから……本当に参っちゃうよ」
今にも消え入りそうな声に、あかねは動きを止めて泰牙を見つめる。
どこか嬉しそうなそれでいて泣き出しそうな、様々な感情が入り混じった表情を浮かべて笑っていた。
「こんな俺を見捨てないでくれてありがとう。これからもよろしくね」
「はい!こちらこそ、よろしくお願いしますね!」
間もなくして泰牙の腕から解放されると、今度はアーネストに手招きをされる。
「あかね嬢。リーデル就任おめでとう」
「わぁ…!ありがとうございます!」
祝いの言葉と共に渡されたのは百合の花が印象的な大きな花束。
あかねは満面の笑みでそれを受け取る。
「それにしても驚きました。アーネストさんがオルディネに入るなんて」
「ふふっ、そうだね。私自身も驚いているよ。まさか出戻ることになるとは思わなかったからね。おまけに彼の思惑通りなのが少し悔しくて、つい取引をしてしまったよ」
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覚悟を決めた泰牙と共に、会議が行われている円卓の間に赴いたアーネスト。
厳正とした空気の中、泰牙は自らの決意を述べ、オルディネに所属する事を宣言した。
特に反対する者もなく、思いの外すんなりと受け入れられたのを見て、泰牙に対する抵抗はほぼ無くなっているとアーネストは端から見て思った。
この様子なら、オルディネという新たな場所でも生きていけるだろう。
彼をオルディネに留めるように仕向けたアーネストは、密かにそう安堵した。
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