わたしの魔法使い
「ち……千雪さんが暴力を……?」


室長の言葉を引き継ぐように、隣のおじいちゃんが口を開いた。



「朱里は私の孫で、社長の娘だ。」




はい?

今、なんとおっしゃいました?

私の孫で…

社長の娘?


「――!」


私の孫ってことは、隣のおじいちゃんって……


「創遊社会長、里村光太郎会長だ。」


「えっ!かかかっ会長?」

驚く僕を室長は厳しい目で見つめ、隣のおじ…もとい、会長は悲しそうな、それでも優しい目で見つめている。


僕の頭、爆発寸前です。

千雪の正体があのときの光で、父親に暴力を振るわれて、目の前には会長がいる。

だめです。

僕には理解不能です。

プシューって頭から湯気が出ちゃいます。


そんな僕に、会長は優しく話続けた。



会長の話をまとめるとこうなる。


千雪こと里村朱里は、高校1年の時、父親に内緒で創遊社のライトノベル大賞に応募、大賞を受賞してデビュー。

ペンネーム以外のすべてを非公開にすることを条件に、専属となる。

作家として7年間、社長である父親にも「千雪」であることを隠し続けていたが、1年前にバレてしまった。

社長である自分が「千雪」の正体を知らなかったこと。それが娘であったこと。その事実が父親としての、社長としてのプライドを傷つけた。

そこから「千雪」への暴力が始まった。


……らしい。

「かっ、会長はその…ご存じだったんですか?千雪さんの正体……?」

「知ってるも何も、私が朱里に書くことを進めた。……だからといって、デビューしたのは私の力じゃない。朱里の……千雪の実力だ。」


「あ……そんなつもりは……」

「いいんだ。こういう疑いをなくすために、あえて非公開にした。」
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