わたしの魔法使い
「処女のお嬢ちゃんには理解できないかしら?」


そう悠然と笑う彼女の顔は、私を完全にバカにしていた。


「どう言うことですか?女の人が男の人を買う。その事と颯太にどんな関係が?」

「そのままの意味よ。颯太は男。そうでしょ?」




信じたくない。

理解なんてしたくない。

颯太が……

颯太が女の人に買われてたなんて……

そんなの信じたくない。 


「信じられない?」

「………」

「本人に聞いてごらんなさい。…ほら、帰ってきたから。」


彼女の視線の先には、悲しそうな顔をした颯太が立っていた。


「颯太……」


今聞いたことと、目の前の颯太と、私の知っている颯太と……

全部がグチャグチャになる。

もう、どうしていいかわからない。


颯太がゆっくりと車に近づいてくる。

怒ったような、泣いているような顔をして、ゆっくりと……


「朱里!来いっ!」


乱暴に開けたドアから、颯太は私の腕を掴む。

いたいほど強い力で。


「奏さん。朱里に何を言った?」

「あら?何って全部よ。」

「ふざけんな!俺はもうあんたのものじゃねぇ!」


今まで聞いたこともないような、颯太の乱暴な言葉。


本気で……怒ってるんだ。



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