わたしの魔法使い
私の知っている颯太は、いつも笑ってて、優しくて、暖かい人。

でも、今私の腕をつかむ颯太は、私の知らない颯太。

どっちが本当の颯太なの?

知りたい……

颯太の全部を知りたい。

だけど、それを拒否している自分もいる。

私はどうしたらいいの?

私はどうしたいの?


数学の答えみたいに、正解はあるの?

ねぇ、誰か教えて……





颯太に引きずられるように歩いてきた先には、初めて出会ったあの公園だった。


「…――颯太。痛いよ……」

「………」

「離して…」

「………」

「離してってば!」


自分が思うより強く、颯太の腕を振りほどいてしまった。

驚いたように振り返る、颯太の傷ついたような瞳が私を捉える。


颯太。何でそんな顔、するの?

いつもみたいに笑って、“嘘だよ”って言ってよ。


「…――奏さんから、何を聞いたの……?」

「……」

「朱里……」



颯太の悲しそうな目が、私を捉えて離さない。


言いたい事、聞きたい事がたくさんある。

でも、何一つ言えない。

口を開いたら、涙が零れるから……



「奏さんから……聞いたんだね……」


私は微かに頷くことしかできなかった。


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