マスカケ線に願いを
「誰に言ってるんだよ」
「小夜さん、また来週」
「うん、またね」
心なしか嬉しそうに、小夜さんが手を振った。そして発進したバイクを見送って、私とユズは車に乗り込んだ。
「上手く行くといいのに」
「案外上手く行くんじゃないかな」
根拠のわからないユズの言葉に、私は首をかしげた。そんな私の頭を、ユズがなでる。
「幸樹が女をケツに乗っけるの、初めて見たんだ」
「え!」
ユズはくすくす笑った。
「幸樹のバイクに乗れるのって、今まで由華ちゃんだけだったからな」
そう呟いたユズが車を発進させる。
「由華ちゃんって……妹さん?」
「そうそう」
「そうなんだ……」
でも、さっきはユズが煽ったから、コウが送ると言い出したようにも思える。
「ユズが送ったら、って言ったからじゃないの?」
「コウは嫌だったら、はっきり言うよ。いくら女の人でも遠慮しないし」
「へえ、コウってフェミニストなのかと思ってた」
ユズは苦笑する。
「あいつが彼女いないのって、シスコンなだけじゃなくて、結構厳しい奴だからだと思うけどな」
「全然気づかなかった!」
そうやってコウの話をしている私に、ユズが苦笑する。
「なあ杏奈?」
「うん?」
ユズの声に、色気が混じる。