マスカケ線に願いを
「二人きりなんだから、幸樹の話なんかやめようぜ」
「そうだね」
その日は久しぶりに、それぞれの部屋に帰った。
部屋に帰ったとき、私はメールの着信に気がついた。
『今日はなんかありがとう! 久島弁護士からメールもらっちゃった!』
文面から嬉しそうな様子が伝わってきて、私の頬が緩んだ。
『これから仲良くなれるといいですね』
お風呂に入って、久しぶりに一人の時間を過ごす。ユズが隣にいないことで、ちょっと寂しく感じてしまう。
ベッドに入った私は携帯を握り締めた。と、タイミングを見計らったかのように着信を告げるメロディーが流れる。
「もしもし」
『おう、杏奈』
受話器から流れてくる、愛しい人の声。
「ユズ、まだ寝ないの?」
『……一人だと寂しいな』
苦笑するようなユズの言葉に、私も心をくすぐられる。
「私も寂しい」
『あんまり可愛いこと言うな』
そう言って笑うユズに会いたい。
「また、明日……」
『うん。それじゃあ、おやすみ』
「おやすみなさい」
私もユズも、長電話が好きじゃない。お互いの声を聞いていると会いたくなってしまうから、いつも我慢する。
私は携帯を握り締めて、そのまま眠りについた。