マスカケ線に願いを
「今日飲みに誘ったのも、小夜ちゃんのこと誘うためだぞ」
「……もしかして、ユズが断るの知ってました?」
「まあな。それに、バイクのケツに女乗せたのも、小夜ちゃんが初めてだ」
私を安心させる言葉を紡いだ。そこで初めて、私は微笑んだ。
「小夜さんは、本当に良い人なんです。私にはもったいないくらい」
「杏奈ちゃんにもったいないって、どういう意味?」
私の言葉に、コウが目を見張った。そんなコウに、私は苦笑する。
「私みたいな頑固で意地っ張りな女にはもったいないくらい、素直で可愛らしい人って意味です」
「……確かに、二人は違ったタイプだよな。でも、杏奈ちゃんが謙遜する理由はないと思うけどな」
コウは笑って、私の頭をそっとなでた。
「俺らからしたら、杏奈ちゃんも十分可愛い」
「……ふふ、ありがとう」
「ユズには内緒な?」
「どうしましょう?」
私達は、秘密を共有するように笑いあった。
コウと小夜さんが、上手く行くと良いと切に願った。