マスカケ線に願いを

「そりゃあ、目立つからな」
「目立ちますか、私?」
「ああ」

 そこで会話が途切れた。
 沈黙は時として気まずいけれど、この沈黙はどこか心地よかった。

 しばらく二人して飾りつけのされていないオブジェを眺めていた。すると蓬弁護士が口を開いた。

「腹、減ってない?」

 蓬弁護士の言葉に、私は自嘲気味に笑った。

「合コン帰りですから」

 蓬弁護士はまじまじと私を見て、はて、と首をかしげた。

「大河原さんが合コンに行くタイプには見えない」
「好きで行ったわけじゃありませんよ」

 だからここで堕ちてたんだ。

 再び、沈黙が訪れる。
 蓬弁護士がじろじろと私を見ていたのには気づいてた。
 その不躾なまでの視線に、私はさすがに堪えきれなくなる。

「なんです?」
「なあ、杏奈って呼んでいい?」

 思いがけない言葉に、私は唖然とした。
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