アンダーサイカ


ずりずりずり…。
狭い通路ぴったりの太さの体が、店から遠ざかっていく。

軒先からヒョコッと顔を覗かせて、去っていく大蛇を見送れば、


「…わ。」


案の定、他の小さなオバケたちがうまくすれ違えずに窮屈そうにしている。

「もう、無理に通るから…。」

近いし、助けに行こうとした。

でも、


「ダメ。いけませんよ。」


ヨシヤは私の手を掴んで引き留めた。店から出したくないようだ。



「なんでダメなの。あのオバケ困ってるよ。」


「すぐに別のお客様がいらっしゃいます。第一小さなきみが助けに向かったところで役には立てませんよ。

……それに、警備員に見つかっては色々と面倒です。」


笑顔のヨシヤが、どこか警戒するように辺りを見回し始めた。


―――そっか、警備員さん…。


地上人を見つけたら地上に連れ出すって言ってたっけ。
私は手伝いの身だ。連れ出されるのはまずい。

困ってるオバケを放っとくのは気が引けるけど。
私は人差し指を立て唇に添えて、シーッと黙るジェスチャーをした。


< 108 / 506 >

この作品をシェア

pagetop