アンダーサイカ
「…………。」
ヨシヤが私の前を通り過ぎる。箒と錆びたチリトリを持った。
「……………。」
また通り過ぎる。
今度はレジ横のペンを一本取った。
「…………………。」
いい加減放置しすぎじゃないかな。
「…ねえ、忙しいなら私、帰ってもいい?」
さすがに居心地悪くなってきて、私はヨシヤに訴えた。
我ながらなんて順応性の高さだろう。
掃き掃除を始めようとしていたヨシヤはこっちを見て、ニコニコ笑顔で答える。
「駄目。いけません。」
…顔は穏やかなのに、声は若干どすが利いてて…恐い。
私は肩を竦める。
けど、ここで諦める気なんてなかった。
食べるだか地上人だか知らないけど、こっちだって得体の知れない相手に大人しくしてるわけにはいかないもの。