アンダーサイカ



“忘れないよ”。



―――あれ…?


なぜか一瞬、その「忘れない」って言葉に引っ掛かりを覚えた。

なんだろう…。私自身は今、何か忘れていることがある…?


「……?」


無意識に胸に手を乗せる。
こうして思い出せたら苦労はしないんだけど。

それを見た潤ちゃんも拓くんも、


「豊花、どうしたの?
具合悪いの?」

「どーした豊花?」


心配そうに訊ねてくれた。


「…っ。」

嬉しい。
…けど心配させるのは良くないことだ。

私は胸からパッと手を離し、「何でもない」の意味を込めてパタパタと横に振った。


「ううん、平気だよ。
何でもないの。」


思い出せないのは、本当だから…。


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