ヤンデレパーティー


男は振り向きもしない。語られているのは、左右対称にならぶ椅子でできた通路に立つ女に向けていても、男はあくまでもこちらを見ようとしない。


話し手としてマナー違反であろうが、女にはどうせ“男が見ている方向など分からない”と高を括ったか、一向にこちらを見向きもしなかった。


「……。誰であっても平等に接せよ、とは教えられずとも分かると思いますがね。自分の知識だけで物事を見ないように。――どこも見えていないとしても、私には何だって認識できるのですから」


「ふむ。盲目でも、分かるものは分かるのか」


これは失礼、と男が振り向いた。


白髪に似合わない若い顔。若すぎるとまではいかないが、少なくとも30代にもなっていない、綺麗な肌をしていた。


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