ブスになりたい女 〜高飛車美少女 VS 秀才クール男子〜
 廊下の隅とか、階段の踊り場あたりで話せばいいと私は思っていたけど、中野和也は廊下の端まで歩いて行き、そのまま階段を軽やかな足取りで下りて行ってしまう。


「ちょっと待ってよ。どこへ行くの?」


 階段の上からそう声を掛けると、中野和也は足を止め、“ん?”という感じで私を振り向いた。


「中庭だけど?」


「あら、そう? でも、なにも……」


 “そんな所まで行かなくてもいいでしょ?”

 と言おうとしたのに、中野和也は階段を下りだしてしまった。


「もう、勝手なんだから……」


 そうボヤキながら、私は彼の後を追って行った。


 こんな風に私が誰かのペースに合わせた事って、今まであっただろうか。

 つまり、私に対してマイペースというか強引というか、そんな態度の男はいなかったと思う。中野和也以外では。


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