あの頃、テレフォンボックスで
それからベッドにもぐりこんだ夫は
すぐに寝息を立て始めた。


降り続く雨の中、家にいると
気が滅入る。



ベッドルームへ行って
夫の寝顔を見る。


いつの間にこの人は
こんな顔で眠るようになったのだろう。


くたびれて。

私や未来の人生を全て背負った
責任を果たすために
彼自身をすり減らして。



佐山を愛しているのかしら?


いつもあるはずのものが
ないとわかったときに
不安にかられるように、


佐山に対して持っているのは
執着・・・なのかしら?



掴んだと思ったものが
手を広げてみると
何も入っていなかったときのように。



こんな風に夫の寝顔を見ることは
今までなかった。


この人は私の男。


この人は私の男。


この人は私の男。




本当にそう?


そして、私は・・・この人の女?



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