あの頃、テレフォンボックスで
志穂は私の体を抱き寄せた。

昔よくやってくれたみたいに。



志穂は私のことが心配だと言って、
抱きしめて
「瞳子、自分の気持ちに正直に。
瞳子、自分がなにをしたいのか、よく考えて。」

よくそう言ってくれていた。



「瞳子、寝ちゃいけない。

好きになるのは仕方ないこと。
17才でも・・・・

男は男なんだろう、と思う。


あなたは
自分のできなかったことを
彼になぞらえて
しようとしているだけ。


過去の上書きよ。


彼をあなたの記憶に巻き込んじゃダメ。」




志穂、


私もそうなんだろうと思っていた。


はじめのうちは。



でもね、そんなことじゃないのよ。

私はもう何も知らなかった
高校生の頃の
私じゃない。


ケイタだって・・・・

何も知らないわけじゃない、と思う。


だけど、
私たちは出会ってしまったんだもの。

奇跡、のように。
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