あの頃、テレフォンボックスで
「ケイタ・・・・
なにしてるの?
こんなところで・・・・・?」


「あ、見つかった。
・・・・・アルバイト。
えっと、カフェラテお待たせしました・・・・」


「・・・・どうも、ありがとう・・・・・」



飲み物を受け取って
とりあえず席に座る。

いつものように窓際へ。


振り返って
カウンターの方を見てみるけれど
ケイタは奥へ入ってしまったようで、
ここからは見えない。


最近・・・・
ここへは来なかったから、
ケイタがこんなところにいるなんて
気付かなかった。



もう会ってはいけないのだろうと、
さっきまで考えていたのに。

カウンターで、
少しだけ触れたケイタの手は
温かかった。



ここにケイタがいる。
今、私と同じこの店に。


たとえ姿が見えなくても、
そう思うだけで
体が熱くなってきて
ざわざわと音を立てている。


大事なものを
手放してはいけないとしたら・・・・
私にはケイタしかいない。


頭では駄目だとわかっているのに、
心がケイタを求めている。


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