あの頃、テレフォンボックスで
子どもができたと知ったとき、
不思議なことに
私の中に芽生えたものは
いいようのない
‘安堵感’だった。



この子は、
もちろん
ケイタの子どもではない。



ケイタとは
あのクリスマスの夜以来
会っていない。



私たちは・・・
朝までずっと抱き合っていた。
お互いの
髪に、頬に、
瞼に・・・・

何度も何度も
触れ合って。



もう二度とは
会えないとわかっていた。


どうすればいいのか、
私たちは知っていた。


それぞれの中に
忘れられない
大切なものを残して・・・


あのとき、
私だけを愛するケイタを

私もまた愛すること以外、


それ以上に
求めるものなんて


何もなかった。
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