あの頃、テレフォンボックスで
花火
夏休みも中盤をすぎた。
未来はテニス部の練習に明け暮れていて
ほとんど家にいない。


夏の退屈な日ほど
気が滅入るものはない。


・・・・こう暑くちゃ、
出かける気にもならないわ。


ケイタとは、
あいかわらずメールで話す毎日。

たまに、会いに行く。


いつもの喫茶店、

隣町のCDショップ、

遠く離れたゲームセンター。



変わったことといえば、

私が彼を‘ケイタ’、
と呼ぶようになったことくらい。


それは、
もちろん親密になったからなのだろうけど
人の目を気にしているせいもある。

年の離れた二人を
人はやはり、親子だと思うだろう。

「ケイタくん」
と呼ぶ私を
不思議に感じる人たちの目線に
ぶつかるような気がして

私から、「ケイタ」って呼んでいい?
と言ったのだ。


彼はなんでもないことのように、
ゲームにコインを落としながら、



「いいよ。」

とだけ言った。






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