わたしは女の子になる。

「はい、どーぞ」

「わーい、…どっちが私?」


おそろいの茶色のマグカップ。
なんか、二人でそろえたみたいで。


「こっちのスプーン入ってるほう」

「…あ、これ、クジラの形してる」


スプーンをカップから持ち上げると、匙の部分がクジラの形をしていた。


「そうそう、かわいい系」

「かわいいー、けど、絶対スープとか飲めないね」

「そうなんだよー」


私が笑うと、彼も笑う。





「どーぞ」


半分にしてお皿に盛ったお菓子を彼に渡す。


「え、俺こんなに貰っちゃっていいの? タルトとか三分の二くらいだけど」


お皿を見ながら彼が言う。


「ぜんぜんいいよー」


だって、食べてもらいたいのは、君だもん。



「じゃ、いただきます」

「はいどーぞ」


自分もお菓子を食べつつ、横目で彼を見る。

なんか、目の前で自分の作ったものを食べられるのって、すごく緊張する。


「ん、うまい」

タルトを食べた彼がひとこと。
思わず、顔が綻ぶ。


「ほんと? よかったぁー」

「てか、マカロンってこのピンクのやつ? なにもの?」

「え、なんかよくわかんないけど、卵白とかいろいろ混ぜていえーいってやると出来る」

「やっべ、全く伝わってこなかったんだけど」

「私もよくわかってない! だから失敗したのです!」


私がそういうと、彼は笑って、『でも美味いよ』と微笑んだ。


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