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ひゅかと学食で、昼食を取っているとき、ひゅかがにやけながら切り出した。
「王子、みあに気があると思うなー」
「まさか」
ひゅかの言葉も、私はただ笑い飛ばした。
「陣君はみんなに優しいでしょ」
「まぁ、そうだけど」
十分だ。
彼の瞳に私が映る。
それだけで、十分だ。
それ以上を求めたら、私は馬鹿をみる。
しかし、ひゅかは面白くなさそうに続けた。
「つーかさ、みあって素っ気無さすぎない?」
「え?」
「どう考えても、王子のこと好きでしょ、みあ」
私は肩をすくめる。
「好きだよ」
ひゅかは100%のオレンジジュースをストローで飲みながら、口を尖らせた。
「王子と話してるときのみあ、すっごく素っ気無い」
「……そうかも」
「こうやって、王子の話してるときのみあ、嬉しそうでさ、あ~、恋してるんだなって感じなのに、なんで本人と話してるときは、すっごい素っ気無いの?」
ひゅかは、私のことを良く見ているんだと、思い知らされた。
私が抱く、臆病さ。
それに気づくくらい、ひゅかは私の事を良く見てくれているんだ。それなら――。
「……恐いの」
それなら、私はひゅかに正直に私の気持ちを伝えてもいいと思えた。
「ん?何が?」
「本人に気づかれるの。私が彼を好きだって。本人だけじゃなくて、他の人にも」
私は、恋に臆病だから。
それは、恋がうまくいったためしがないせいなのか。
自分にも、わからない。