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「なんかね、思ったより傷つかなかった。多分、気持ちがそこまで高ぶってはいなかったんだと思う」
「本当に平気？　強がってるだけじゃ……」
「みあっち、ひゅか、おはよう！」

　ひゅかの言葉を遮るように、陣君が話しかけてきた。
　私の心臓は……もう反応しなかった。

「あ、王子おはよう」

　陣君が当たり前のように私の隣に座る。

「あれー、なんか二人、前より仲良い感じ」

　ひゅかが、からかうように言った。

「そんなこ……」
「うん、まあね。この前も一緒に食事したし。俺達、仲良しだよな」

　私が何か言う前に、陣君がそう言った。
　その笑顔に、私は嬉しくなる。


　私は、彼の笑顔を見るだけで、暖かい気持ちになれるから。
　それなら、彼女になりたいなんて、我侭を言わなくて良いと思える。

　だけど、心の奥底では、もしかしたら、なんて、思っているのかもしれない。
　いつか、陣君の気持ちが、私の方に、動いてくれるのじゃないかと。

　そんな、黒い感情に気づきたくなくて、私は心に封をした。