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「氷田君、君も今日はあがっていいよ」
小沢さんの言葉に、陣ははっとして頭を下げた。
「ありがとうございます」
「それじゃあ、私達は先に社に戻っているから」
「はい」
木戸さんが、心配そうに私を見ている。
「……っ」
「佐川ちゃっ……」
「みあっ!」
私は、耐えられなくなって会議室を逃げ出した。
私は、一心不乱に走った。
私とすれ違った人が、何事かと見送る。
どうして、今さら彼と再会したのだろう。
私の、一体何が悪かったのだろう。
ちゃんと、陣とお別れしたのに。
ちゃんと、自分自身でけじめをつけたのに。
どうして、またこんな風に再会しなければいけなかったのだろう。
思い出になりかけていたのに。
戻ってきてしまった。
あの時、捨て切れなかった感情が。
私はまだ、陣が好きなのに……。
私はまだ、陣が佐和さんのものになっているのを、受け止められるほど、祝福できるほど、強くはないのに。
私の心を、お願いだからこれ以上……!