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「みあっ!」

 手をつかまれて、私は逃げられなくなった。

「放してっ」

 叫んだ瞬間、涙がこぼれた。

「放してよっ」

 そこは、休憩スペースとして設けられている公園をモチーフとした場所だった。
 仕事を終えてくつろいでいた数人が、何事かと私達を見ていた。

「放さない」
「放し……っ」

 私は振り返って、陣と向き合った。
 灰色の瞳は、まっすぐ私を見ていた。
 陣の瞳に捕らえられて、私は動けなくなった。

「やっと……見つけた」
「…………」

 往生際が悪かろうと、私はその場から逃げ出したかった。
 だけど、さすがに諦めた。

「痛いよ……」
「ごめん」

 陣が、私の手首をつかんだまま頭を下げた。

「本当に、ごめん」

 陣の手は、震えていた。

「みあが苦しんでいたのに、助けてあげられなくてごめん」
「……陣……」
「みあが泣いてたのに、気づいてあげられなくてごめん」

 ぼろぼろと、みっともないくらい涙がこぼれた。
 あの時の感情が、まざまざとよみがえってくる。
 あの時の悩み、戸惑い、そんな感情が、ぐるぐると心にわきあがってくる。

「本当に、ごめん」
「じ、陣……頭、上げて……」

 罪悪感が、同時によみがえってくる。
 陣が悪いんじゃない。
 私が悪かったのに。
 陣は、ゆっくりと頭を上げた。
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