抵抗軍物語 ディスティニーズクロス
今の優奈のその姿は、まるで…
「あっ…悪魔ァァァァァァ!!」
ようやく声が出せるようになった男は、そう叫びながらネオンの光で輝く道を一目散に駆け抜けて、夜の闇に消えていった。
『尻尾を巻いて逃げる』というのは、まさにあの事なのだろう…と優奈は思った。
その後、しばらくの沈黙。
すると誰なのかは分からないが、突然パチパチ…と拍手をする音が小さく聞こえた。
その拍手はどんどん周り広がっていき、いつの間にか店にいた人全員だけでなく、通りすがりの人々までし始める。
(何の拍手だよ…。)
が、当の本人は余り快くは思っていないようだ。
チッ…と心の中で舌打ちをしながらも、どうする事もできないのでとりあえず店の中に入る。
(あんな拍手気持ちいい訳ない。
人を傷つけて貰う拍手なんて…、あたしはいらない…)
そう考えると心が痛くなり、それでも今はその痛みに耐える事しかできなかった。
*****
その後、優奈は店のオーナーから感謝の言葉と報酬金を貰ってから店を後にした。
「5万円か…。結構多いな…」
渡されたお金の入った茶封筒の中を確認しながら、再び看板から出るネオンの光に照らされた遊歩道を歩く。
「や、やめてくださ…っ…」
すると、建物の間にある細い道の前を通りかかった時、そんな声が聞こえてきた。
どこか怯えた様子がその声の震えから分かる。
「へっ!いいじゃねェか姉ちゃんよォ。」
「俺らとちょっと危険な夜遊びしない〜?」
その後に聞こえたのは、下衆な男たちの声…。
なるほど…。確かにその道を覗くと、一人の女性に三人の男が詰め寄っている光景が見えた。
「な、ちょっとそこまでだし。」
すると一人の男が、嫌がっている女性の右腕を掴んだ。
「嫌っ!離して!!」
女性は必死に男の手を振りほどこうとする。
しかし、白くて華奢なその細い腕では、男の下衆ながらも力強い腕はビクともしない。
男女の力の差…という物だろう。
それでもなお抵抗する女性を見て男たちは、嫌な笑みをニヤニヤと浮かべている。
(そろそろ限界だよな…。ああ、本当にこの街は…)
「鬱陶しい。」
吐き出すように言葉を綴り、優奈は道の前に転がっていた細い木の板を拾うと、女性を囲んでいる中で一番通路側…自分から近い場所にいる男に向かって、それを投げ当てた。
「うっ…!」
と、軽く悲鳴を上げしばらくしてから男はあっけなく倒れた。