抵抗軍物語 ディスティニーズクロス
周りの客やキャバ嬢、ボーイたちが固唾を飲んで見守る中、優奈はしばらくの間黙り込む。
『もう終わりか…』男はそう思いホッ…と安堵の笑みを零す。
しかし…まだ何も終わりも始まりもしていない。
男が安堵の笑みを浮かべた事に、無論優奈は気付いている。
優奈は男の胸ぐらを掴んでいる手に、更に力を込めた。
瞬間、男の顔が一気に青ざめる。
まだ終わっていなかったのか…。
そんな不安が一気に身体中を駆け巡る。
優奈は続いてこう言った。
「…テメェもう大人だろ。なら、やっていい事とダメな事の区別くれぇつくんじゃねぇのか!?あぁ!?」
今度は不良のような…そんな荒々しく怒鳴り付けるような口調で、男を更に強く睨みながら言う。
さっきのまだ優しい口調での説教は、正に『嵐の前の静けさ』などという言葉がピッタリだろう。
そして優奈は男の胸ぐらを掴んでいた手をバッ…と乱暴に離す。
男は地面に叩きつけられた…が、これまた恐怖のせいか、何もできずただ呆然と優奈の事を泣き崩れてグシャグシャになった顔で、怯えながら見つめる事しかできていなかった。
その様子に苛立ちを覚えた優奈はペッ…と痰を一つ吐くと、今度は男の頭を上から掴んだ。
14歳の女の子とは到底思えない…今にも頭が潰されてしまいそうな激痛が、男の頭を襲う。
「いっ…いた……い……」
それさえ言うのもやっとだろう。
男はもう、恐怖の所為で何も考えられなくなっていた。
ただ怖くて…逃げ出したいのに、身体が思うように動かない。
さしずめそんな所だろう。
また、それはその様子を傍観している全員が、何も言わずとも分かっている事でもあった。
そして優奈はそのままの状態で、男に顔を近づけ、
「今度また同じような事したら…あたしはお前を殺すつもりでここに来る。…命が惜しければ、もうこんな事は二度と!一切!すんじゃねぇぞ!例え違う店でも、違う国でも…あたしは、三千世界の彼方までテメェを追い掛けて、テメェの命を奪いに行くからな…」
心なしか、優奈の黒い筈の瞳が、赤く爛々と不気味に光っているように見えた。そして、その見る者全てに恐怖を与えるような目で男を睨み付け、嘲笑っているのか怒りを爆発させているのかよく判らないまま言うと、優奈の身体から赤黒く不気味なオーラが出ているような…
そんな錯覚をその場にいた全員が見た。
ような気がした。