抵抗軍物語 ディスティニーズクロス
「あ、ちょっと待て!!」
すると、炎真がそう言って優奈を呼び止める。
優奈はドアノブに掛けていた手を離し、
「まだ何か?」
そう尋ねた。
「いや、その…」
すると炎真は微妙に頬を赤らめ、髪を掻き上げながら、
「…その『猿飛君』って呼び方…なんかこそばゆいからさ…炎真でいいよ。炎真で…」
外方を向きながら呟くようにして言う。
しかしそんな小さな声でも、優奈には十分に聞こえていた。
「…じゃあ、あたしも。優奈って呼んで。」
「お、おお…わかった…」
「ありがとね。…じゃあ、行ってきま〜す。」
その言葉を最後に部屋を後に…
「あ、まだ用事あった。」
しなかった。
くるっ…と百八十度方向転換して戻ってくると、優奈は炎真の口元を指で拭った。
その細く白い指には、先程炎真が食べていたケーキの生クリームがついている。
優奈はその指(についたクリーム)を舐めてから、
「はい、これでOK。」
そう言いニコッ…と微笑んだ。
その瞬間、炎真の顔は先程タオル越しとはいえ優奈の裸を見てしまった時…程ではないが赤く染まっていく。
その理由は、優奈の笑顔なのか…行動なのか…あるいはそのどちらもなのか…
本人にも理由は判らない。
ので、
「え、ぁ、お、おお前…////」
取り乱す事しかできなかった。
「…何?何かいけない事した?」
一方の優奈の方は、炎真のように取り乱す様子もなく、至って普通に尋ねる。
しかし炎真は何も答えない。
そこで『少しおかしいな…?』と思った優奈だが、
「じゃ、本当に行ってきま〜す!美都さん炎真のお相手お願いしますね!」
大して気に止めず、しかも至って普通に店を後にした。
優奈が出ていってから、少し時間が経過した。
店に残された炎真と美都。
炎真はまだ少し頬を染めていた。
(アイツ…優奈か?//もしかして天然…//)
と、思った…その刹那。
ゾクッ…と悪寒に近い嫌な寒気が身体中に走る。
そして、背後から嫌な気配を感じ取った
恐る恐る振り返ってみると…
「あ…、美都…姉…」
そこには、再び鬼のような形相になった…いや、正に鬼と言っても過言ではないと思われる美都の姿があった。
目はギラギラと白く光り、身体の周りには不気味な黒いオーラが漂っているような錯覚を起こさせる。
仕事中の優奈ほどではないが、それでも十分怖い。
「炎真…あのさぁ…」
「ひっ…」
その白く不気味に光る目で炎真を見ると、炎真の口から短い悲鳴に近い声が漏れた。