抵抗軍物語 ディスティニーズクロス

無法の街の何でも屋


一、

燐塊町(りんかいちょう)

人口1500人が住む、小さな港町。

国の本土から少し離れた島にある町で、その為か経済成長を続ける本土に比べ、自然と水資源に恵まれた町である。

町の周りは綺麗な海に囲まれている為、ちょっとした観光地としても名が通っており、夏や長期休暇などになると本土や外国から多くの観光客がやって来る。

そんなこの町にある市街地の一角に、少し風変わりした一件の店があった。






石壁造りで瓦屋根の一軒家。

扉は昔よくあった横開きの物。

周りの建物や店はレンガ造りの物が多い為、商店街の中では一番よく目立っている。

色んな意味で…だが。

その店の木の看板には、墨で書いたような字でこう書いてあった。

『何でも屋 神無月』

世間一般では『万屋』とでもいうのだろう。

つまり『何でもする店』の事だ。






すると、どこからか来たのか一人の少女が店に入っていく。

いや、『帰っていく』といった方が正しいのだろう。

空色の綺麗な長髪に、黒く済んだ少し釣り目の大きな瞳。

雪のように白く透き通った肌…。

歳の頃はおそらく13〜14辺りだと想定できる。

『美少女』なんて言葉が、とても似合いそうな美しい少女だ。






彼女の名前は神崎 優奈(かんざき ゆな)。

『何でも屋 神無月』の、たった一人の従業員でオーナー。






そして…この物語の主人公だ。





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