抵抗軍物語 ディスティニーズクロス

「ただいまー…」

ガラララ…と横開きの扉を開け、店の中(自分の家)へ入る優奈。

(…っても誰もいないよな…)

と思った瞬間、「おかえり〜」と言う声が廊下の一番奥の突き当たりにある部屋から、テレビの音と共に聞こえてきた。

ふ…と足元を見ると、少しボロいサンダルが脱ぎ捨てられている。
が、それともう一つ。
赤い鼻緒に小さな牡丹の花の絵が描かれた漆塗りの綺麗な下駄が、箱に入れられて置かれていた。

(あ…、あの人来てるんだ…)

優奈は『またか…』と言わんばかりの残念そうな表情で、一つため息をつく。

(…ったく、少しは自分で何とかして欲しいんだけど…。)

そんな事を思いながら自分も靴を脱ぎ、先程声が聞こえた奥の部屋に向かった。






そこは十二畳程の広さのあるリビング。
その中央にある、机を挟んで二つ向かい合ったソファーの一つに、一人の女性が寝転びながらテレビを見ている。
机の上に置かれた煎餅を噛りながら。
そのお陰(所為)で、ソファー周辺と机の上は、煎餅の食べかすがたくさん散らばっていた。

優奈はその状態に苛立ちを感じながらも、冷静に、落ち着いた声で諭した。

「…食べながら横になるのって、凄く太りやすいんですって。美都(みと)さん。」

すると優奈に『美都』と呼ばれた女性は、

「あ〜大丈夫、大丈夫。私太りにくい体質だから〜」

そう言って全く相手にしない…。と思ったら、ゆっくりと上体を起こした。






一応説明しておこう。

この女性は神崎 美都といって、優奈の義理の伯母に当たる。
伯母と言っても、まだ26だが。
不法侵入者ではない。






美都は容姿だけなら美しい女性だと思う。

大和撫子を思わせるような綺麗な黒髪と瞳。
妖艶で気品溢れる雰囲気を持っており、今まで数々の男を騙してきた遊び人。
抜群のスタイルに白い肌…
それは日々の努力による物と本人は言うが、実は整形疑惑有り。






しかし…中身は『美しい女性』という外見のイメージをカンペキに裏切っている。
多分裏と表の差だったらギネスにでも載ると思う。
うん、多分。

基本的には明るいのだが、面倒臭がりで、自己中で、他人が苦しんでいるのを見て喜ぶようなサディスト。自分自身に得が及ぶ事しかせず、決して他人の為に行動しようとはしない。

そして…

「優奈〜、それより冷蔵庫の中にある焼酎持って来て〜?」

酒乱だ。

足元を見ると空の酒瓶が二、三本転がっている。

それとは別にワインの瓶、焼酎の瓶(名前忘れた)もあるし…。

絶対に、将来肝硬変とか急性アルコール中毒にでもなると思う。
…っていうかそれで少し大人しくなってくんないかな…というのが優奈の美都に対する心情である。

まぁ…こんな事から26という若さでバツが二つもあるのだ。






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