抵抗軍物語 ディスティニーズクロス
「…こんな昼間からお酒飲んだんですか?夜まで持ちませんよ?」
現在の時刻、午後3時35分。
一般人なら働いている時間帯。
「大丈夫だって〜、酒は飲んでも飲まれないからさ〜」
(いや、どう考えても飲まれてるだろ。)
心の中で呟く。
そして優奈は再びため息をつき、床に転がった酒瓶を拾い始めた。
ついでに美都が散らかした煎餅の食べかすも、箒で掃き塵取りで取っておく。
これだけでも先程までとは見違えるように綺麗になった。
「…全く、手間掛けさせないで下さいよ。ここ一応仕事場なんですからね?」
「ほーい…」
呆れながら注意する優奈に、美都は軽いノリで返事を返す。
これじゃあどっちが大人なのか…
優奈はふ…と、いつもこんな事を考える。
「…それより、もうそろそろ時間ですよ?着替えなくていいんですか?お勤め4時からですよね?」
優奈がそう言うと、美都はハッとした表情で時計を見る。
そしてその瞬間、今まで酒気を帯びて赤くなっていた顔が一気に普通の色に戻っていった。
「嘘〜!もうこんな時間!?」
「あ、戻った。」
どうやら酔いが醒めたらしい。
「ヤバっ!またマスターに叱られる!優奈!」
「…ったく、判ってますって。」
「でも、今日くらい休みたい〜」
「ダメです。」
美都の我が儘を聞き流しながら、優奈はハンガーに掛けられている赤色の着物を取った。
その次に、タンスからその着物によく映えそうな緑色の帯と金の簪を取り出す。そしてその着物を、長襦袢を着た美都に気付け、帯を作り、髪を古風な感じにアレンジして最後に簪を差した。
数分後、そこには美しい花魁の姿があった。
先程までの美都の様子が、まるで嘘のようだ。
同一人物とは思えない。
「さっすが優奈ちゃん!いつもながら仕事が早いねぇ〜」
美都は優奈にウインクをしながら言う。
なぜか言動も先程までの面倒臭そうな感じとは違い、明るく元気になっている。
「…本当に貴女は、仕事だけでは人が変わりますよね…」
美都のそういう所は、優奈が唯一尊敬している所でもある。
呆れつつも…だが。
「何言ってんの?これは営業モード。実際の私はこんなじゃないわよ。」
「知ってます。」
断言した。
が、美都はそんな事気にしてない様子。
「じゃあ、そろそろ行くから〜。見送りヨロシク!」
「…はい。」
そして二人で玄関ではなく、裏にある勝手口へ向かった。