急性大好き症候群
二年であたしは限界を迎えた。


いつも傍にいたからこそ辛い。


常に太一と一緒にいたから余計辛い。


太一が苦しむ姿も悲しみに暮れる姿も、ずっと傍で見てきた。


あたしを抱くことでそれが和らぐのならと、二年間耐えてきた。


でももう、あたしがもたない。


限界だ。


「太一は……残酷だ」


それでなくても、あたしは太一が好きなのに。


更に好きにさせて二年も逃げられなくした。


太一はなんて酷い男だろう。


「唯織……」


太一があたしの肩に触れた瞬間、あたしは弾かれるように飛び起きた。


「触らないで!」


起き上がって目から腕を離して太一を見ると、太一は悲しい顔をしていた。


その顔はあたしに対するものではない。


「もう、あたしに逃げないで……」


太一は優しいから、麻尋ちゃんが苦しかったらそれが和らぐように抱くのだろう。


だからあたしの時は激しかった。


でもそれはただの逃げだ。


優しさは臆病を隠す言い訳。


それをあたしも太一も、始めからわかっていた。


もう好き嫌いの問題ではなかった。


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