急性大好き症候群
「もう……終わりにしよう」


太一の前で涙が流れたのは本当に突然だった。


今まで心の奥に閉まってきたものが前触れもなく溢れ出した。


太一に押し倒された瞬間、涙腺が崩壊した。


ああ、もう限界だ。


「唯織……?」


太一はそんなあたしを見て、あたしから離れた。


「もう、やだ…………」


太一が唖然とあたしを見て、あたしはさめざめと泣いた。


床に寝転びながら腕で目元を隠す。それでも涙は耳にかけて流れていく。


唇を噛み締めても嗚咽が止まらない。


「もう、やめよう、太一…………」

「唯織、どうした?」


いきなりあたしが泣いたら、そりゃあ驚くに決まっている。


でも、わかっていたはずだ。


太一はあたしの気持ちに気付いていたのだから。


「もう、太一のそんな姿、見てらんないから……」

「……どんな姿?」

「麻尋ちゃんを思って、あたしを、抱く姿なんか…………」


太一は何も言わない。あたしは目を隠しながら口を開いた。


「わかってる? こんなことしても、あたしも太一も幸せになんかなれない。麻尋ちゃんも、苦しむだけ……………。太一が好きだから受け入れてきたけど……もう、もうやだ…………」


少しでもこの関係に未来があると考えた自分が恥ずかしい。


二年経っても、この関係が変わるはずがない。


太一の気持ちが二年で動くはずがない。


それよりも長くずっと麻尋ちゃんを思っているのだから。


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