純悪女!?~ドSなアイツの結婚計画~
コツコツコツ
すっかり人通りの少なくなった通りで、私のパンプスの靴音だけが響く。
怖くて、何も話せない。
自分の知らないところで、誰かに見られているかもしれないという恐怖が、こんなに怖いものだとは知らなかった。
「安永、そのままゆっくり歩け」
「えっ?」
「あの角を曲がったら、少し離れろ。いいな」
突然、彼が前を見据えたまま小声でそう囁く。
彼は何かを見つけたんだろうか。そんな声に足がガクガクして、上手く歩けているのか自分でもよく分からなくなって――。
いよいよその角を曲がった時、桐生さんが立ち止まる。
「行け」
その一言で、ほんの少し先まで歩いて振り返った。