絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ

衝撃の巽の過去

 「ねえ、今日休みなのに、何で連絡くれないの!?」、「今仕事じゃないのよね?」、「やっぱり休みあるんじゃん」……。
 風間とお茶会の帰り道、自宅に着くのを待ち切れず、歩きながら携帯のディスプレイに巽の番号を映し出して、第一声を何にするのか、しばらく考えていた。
 ふと、思う。もし、出なかったら。仕事だって言われたら、どうしよう……。
 いや、考えるだけ無駄だ。
 思い切って、通話ボタンを押す。
 時刻は午後3時。寝ている可能性も、なきにしもあらず。
 一度かけて出なかったら、もう一度だけかけてみようか……。考えながら、コール音を4回数えた。
『はい』
 ほっとした。
「今どこ?」
『横浜だ』
「仕事?」
 冷静に、落ち着いて。
『いや……』
「休みなの?」
 口調が既にきつくなっている。
『……ああ』
「何で休みなのに連絡してくれないの?」
 休みだから、休みでないからという理由で、巽が連絡をよこすことは、ない。
『用事で来ている。もうすぐ帰るつもりだ。夜、そっちに着いたら連絡するつもりだった。今日は休みだろ?』
「そうだけど」
 自分一人でしたい用事だってあるに決まってる。例えば、友達に会うとか。大人の巽でも、昔の友達とかいるだろうし、親戚のところとか、とにかく、自分が知らないところで、用事があったとしても、何も不思議ではない、自然なことだ。
「そうだけど……」
『7時……でいいか?』
「え、あ、うん……、家がいい。新東京マンションの方に行くから」
『食事は?』
「え……」
『作れるか?』
 何その要求……。
「……ルームサービス頼もう」
『……分かった。7時には帰っている』
「……ん……」
 不機嫌になる必要はない。今から新東京マンションに行って、料理を作り、テーブルの上に花でも生ける余裕が十分あるくらいの時間だ。
 だけど自分はそうしない。そういうぶりっこが嫌いだし、そういうところを見てほしいとは思わない。
 ……けど、もし、これが結婚したい女性ナンバーワンなら、間違いなく手料理を披露するに違いない。
つまり、そういうところで、自分は結婚に向いていないのだろうか?
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