絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
 巽はどう思ったのか、すんなり靴を脱いでベットに腰を下ろしてくれた。もしかしたら、私が思っているよりも、巽は私のことを大事に思ってくれているのかもしれない。
香月は今更になって、ようやくそう信じ始めた。
ゆっくり、そのスーツの膝の上にまたがり、巽をぎゅっと抱きしめる。
 力を込めて、更に匂いを嗅ぐつもりだったのに、
「わっ……」
 巽はそのまま後ろに倒れこみ、香月は馬乗りの状態になった。
「……今週、木曜休みか?」
「木金連休だよ」
 期待して言う。
「……分かった。休みをとる。2日」
「え、本当!? いいの!?」
 香月は巽の上で勢いよく跳ねた。
「ああ。……その後の残業くらい、どうにでもなる」
 巽は少し顔を歪めて笑う。
「え、ああ……。でも嬉しい。ありがとう!」
 この時ほど強く、心を込めて巽を抱きしめたことはない。 
想いが伝わったんだと思った。
離したくないという気持ちが、しっかり実になったんだと思った。
好きな人が自分の側から離れる。それがどれほど恐ろしいことかを知っているから、あんなに強く、腕を掴め、それで間違いなかったんだと心底感じた。
これで自分達は、きっとうまくいくんだと思った。

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