絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
「では、僕はここで降りますので」
アナウンスが聞こえ、再びドアが開こうとしている。
「あ、はい、……さようなら」
「さようなら」
彼がドアから出て行ったと同時に、佐伯はすぐに香月の隣についた。
「誰です―??」
「えーと、大学の先生、東京大学の英語の先生だって」
「え、知らない人?」
「今ぶつかって、痴漢じゃありませんって。大学の教官カード見せてくれた」
「すごい満員でしたよね、へー、よかったですね、イケメンで。けど若そうに見えたけど、年いってたんですね」
同じことを思っていたということに親近感が増したが、あえて言わないでおく。
「私もう次で降りるから」
「はい」
「やだなあ、今から宮下店長と話だ……」
「やめるのか、やめないのかって話ですか?」
「いやあ……ただの愚痴祭り」
「いやだと思ってるのは宮下店長の方かもしれませんよ」
「……ですよねー」
「ですよねー」
「あーあ……、じゃあまた。次いつ休み?」
「見てない」
「役立たずだなあ……、とにかくまたお金返しに行くから。じゃあまたね」
電車のドアから出て気づく。あ、吉田は本当にどうしただろう。
アナウンスが聞こえ、再びドアが開こうとしている。
「あ、はい、……さようなら」
「さようなら」
彼がドアから出て行ったと同時に、佐伯はすぐに香月の隣についた。
「誰です―??」
「えーと、大学の先生、東京大学の英語の先生だって」
「え、知らない人?」
「今ぶつかって、痴漢じゃありませんって。大学の教官カード見せてくれた」
「すごい満員でしたよね、へー、よかったですね、イケメンで。けど若そうに見えたけど、年いってたんですね」
同じことを思っていたということに親近感が増したが、あえて言わないでおく。
「私もう次で降りるから」
「はい」
「やだなあ、今から宮下店長と話だ……」
「やめるのか、やめないのかって話ですか?」
「いやあ……ただの愚痴祭り」
「いやだと思ってるのは宮下店長の方かもしれませんよ」
「……ですよねー」
「ですよねー」
「あーあ……、じゃあまた。次いつ休み?」
「見てない」
「役立たずだなあ……、とにかくまたお金返しに行くから。じゃあまたね」
電車のドアから出て気づく。あ、吉田は本当にどうしただろう。