境界線
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「貯金が底をついてしまいました」
可愛い後輩は私を見つめた。
その瞳は潤んでいて、今にも何かが零れだしそうだった。
「お願いします」
後輩は眉をよせ、口元を震わせる。
ここできっぱり否定すべきだった。
次にくる台詞はもう見えていたのだから。
「家においてもらえませんか」
どうして、ここまで追い詰められた後輩の必死の頼みを断ることができるだろう。
私は部長という地位を恨んだ。
だが、思考が正常に回転する前に口は勝手に動いていた。
「ま、まかせなさい」
この瞬間、はっきりと引かれていたはずの境界線が少しぼやけてしまった。この時の私にはそこまで意識をやる余裕はもちろんなかった。